弱虫がグレーテルになるために。 心臓を苦しめるのは、もう飽きたの。 充分でしょう？ あれだけ迷ったなら。 進む道も見定めぬままに 踏み出すのは愚かだと人は言うけれど、 ただ迷い悩むままに動かないよりは 幾分かましな気がするのよ。 膝を抱えて沈みゆくのは、もう無意味なの。 自分で縛りつけた縄だなんて、 誰も笑ってはくれない。 道化になりきれない愚者ならば 美しいガウンを着てワルツを踊るのも一興よ。 ただ人の手のひらで踊るよりは 自分の足で大理石の床を踏み鳴らしなさい。 何も切りつけられないなら、 もう捨ててしまいなさい。 刃こぼれしたナイフを握り締めても、 何も断ち切れやしない。 その心臓に突き立てるのは 愚かな刃ではなくて 賢明な決心であるべきよ。 赤い靴を脱ぎ捨てて腕を伸ばし 見えない先まで飛び込めばいい。 氷砂糖の階段から飛び下りて、 裸足で大理石の廊下を駆けて行け。 |
| 「ヘンゼルとグレーテル」 |
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