メンテナンス 冷たく光る鏡の前 首筋のふたをはずしたら、 さび付いた歯車とネジが見えた。 ブリキの心臓へ至る導管の中で、 蜜色だったオイルは枯れ葉色になり、 どろりとして行き場なく滞っている。 関節がきしきしと悲鳴を上げる。 真鍮のワイヤーが黒さびている。 冷えた指先で触れるとそれは、 さびしい音を立ててはじけ飛んだ。 ひびの入ったガラスのフラスコ 流した塩水を溶かして ガラスの目の奥に注ぎ込む。 蛇口をゆるめて、さあ、泣いて。 胸に残るランプは燃料切れ。 心臓のそばにはどろどろにつかえた導管。 このままでは動かなくなる。 だから命を動かすオイルの代わりに、 濃度のうすい涙が導管を洗い流した。 |
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