囚われの勇者 岸壁につきたてられた古さびた剣(つるぎ) 引き抜くと蒼白の稲妻がとどろいた。 黒雲の空にかざす白い刀身 けものの牙のように冷たく閃く。 傷だらけの腕で刃を抱きしめて、 私は世界の果てに走り出した。 無機質な要塞をくぐり抜け、 驟雨(しゅうう)に体を蝕まれ、 無関心な視線に身を切られ、 嘲る言葉に心が欠ける。 仮面の顔で笑い返しながら、 その下の素顔は世界の果てをあきらめない。 たどり着いたガラスの塔 剣(つるぎ)を抱えたまま、 クリスタルの階段を駆け上がる。 とびらをふさぐ姿のない魔物 現実なんてそんなものだとあきらめた時点でバッドエンド 刃を頭の上に振りかざし、 力いっぱいになぎ払う 世界の果ての空の果て 黒ガラスのとびらを切り破り、 美しい牢獄に踏み入れる。 おびえた顔で振り向く少年 彼と視線が噛み合った途端、私の手から剣(つるぎ)が落ちる。 姿の違う鏡合わせ 囚われの王子こそ、臆病な私自身。 彼に刃を、私に幕を。 望んだけれども体は動かず 勇者の剣を投げ捨てて、私は涙ながらに手を差し伸べる こんなところはもうたくさんだ 手を取り合って、世界の果てのその向こうまで行ってやろう。 あきらめたらエンドロール。 きっと果てはここじゃない。 |
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